大阪高等裁判所 平成5年(ネ)868号 判決 1995年7月27日
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一 申立
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは各自、控訴人松居幸三及び控訴人並川昭二に対し各三七〇万三七〇三円、控訴人中村繁子に対し一八五万一八五一円、控訴人中村博一及び控訴人中村京子に対し各九二万五九二五円、並びに、右各金員に対する被控訴人松居敬二、被控訴人松居弘泰及び松居久之助については平成四年二月二〇日から、被控訴人島本弘子については平成四年二月二一日から、被控訴人山田悠喜子及び被控訴人山田護については平成四年二月二二日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 控訴費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言
二 被控訴人ら
主文同旨
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決三枚目裏二行目「が、」から同三行目「された」まで及び同八、九行目「被収用者である」をいずれも削除する。
二 同五枚目裏末行目「である。」を「であるところ、被控訴人らが本件土地を売却したのは、後述するとおり控訴人らの相続回復請求権が時効消滅した後であるから、被控訴人らのみで右売却代金を分配したことについては法律上の原因があるというべきである。」と改める。
三 同六枚目表六、七行目を「よって、被控訴人らのみで本件土地を売却し、その代金を被控訴人らのみで分配するについては法律上の原因があるから、控訴人らは、不当利得返還請求権を有しない。」と改める。
四 同六枚目裏五行目末尾に「しかして、相続権を侵害することについての悪意又は有過失の判断の基準時となる相続権侵害行為がなされた時点とは、前記大垣市による代位登記の時点ではなく、後述の被控訴人松居敬二を中心とする本件不動産の処分時とみるべきである。けだし、大垣市による代位登記の時点とするならば、侵害者の主観的要素が入り込む余地がなく、本件の実体関係を無視した不当な結果を招来するからである。」を加える。
第三 証拠(省略)
理由
一 当裁判所も、当事者双方の当審における主張・立証を併せ考えても、控訴人らの被控訴人らに対する本訴請求は理由がなく、いずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決九枚目表一〇行目「亡庄七」から同裏三行目「有する」までを「亡庄七は、生前、岐阜県大垣市西外側町二丁目四四番地所在の土地(従前地)を所有していたが、大垣市を施行者とする土地区画整理事業による昭和五一年一〇月二七日付換地処分により、右土地(従前地)は、同町四七番地所在の土地(以下「本件土地」という。)に換地され、大垣市は、同年二月二七日、職権で、被控訴人松居敬二らのみが亡庄七の相続人であるとして、同被控訴人らのために本件登記をしたため、同じく亡庄七の相続人であった」と改める。
2 同一一枚目表一行目ないし四行目までを「被控訴人らが本件土地を売却し、その売却代金を被控訴人らのみで分配したことについての法律上の原因の有無を判断する上で、民法八八四条の適用ないし類推適用の余地があるか否かについて検討を要するものといわなければならない。」と改める。
3 同一二枚目表一行目「原告らの」から同二行目末尾までを「控訴人らの相続権侵害は、前記認定のとおり、控訴人らの相続持分権がいわば被控訴人らに移転されて被控訴人らに帰属したような外観が、被控訴人らのみを相続人とする右大垣市による代位登記によって顕出されて、生ずるに至ったのであるから、昭和五一年二月二七日の大垣市による代位登記によって、控訴人らの相続権侵害が開始されたものというべきである。けだし、相続回復請求権の対象となる相続権侵害とは、表見相続人(表見共同相続人)において相続権侵害の意思あること及び所有の意思をもって相続財産を占有することを要せず、現に相続権侵害の事実状態が存在すれば足り、したがって、右外観を顕出する行為が、被控訴人ら又は控訴人ら相続人によってなされたものか、それ以外の第三者によってなされたものかを問わないからである。そして、前記大垣市による代位登記がなされた時点において」と改める。
4 同一三枚目裏一一行目「本人尋問の結果」の次に「、当審における控訴人並川昭二、被控訴人島田弘子及び被控訴人松居敬二各本人尋問の結果」を加える。
5 同末行目「総合すると、」の次に「被控訴人松居敬二は、昭和五八年ころ、父の松居修造から本件土地の存在を聞くとともに、本件土地につき自己の相続持分権があることを知ったが、本件土地の現地に見に行ったこともなく、また、本件土地の登記簿上、中村忠雄、控訴人並川昭二及び控訴人松居幸三の相続持分権の登記が漏れていることは知らなかったこと、また、被控訴人松居敬二自身、控訴人らとは交際がまったくない上、その身分関係についても正確に分からなかったこと、平成三年に至り、被控訴人松居敬二は、被控訴人山田悠喜子及び被控訴人山田護が経済的に困っているのを知り、本件土地を売却することを提案したことから、本件土地を売却して、本件土地の登記簿上相続持分権者となっている被控訴人ら間でその売得金を右持分権の割合にしたがって分配することとし、知り合いの不動産業者に右売却を依頼したが、被控訴人松居敬二自身は、本件土地の売却に関与せず、司法書士への依頼、委任状や印鑑登録証明書等必要書類の徴求は、もっぱら被控訴人山田悠喜子が行ったこと、」を加え、同一四枚目表一行目「被告敬二」を「被控訴人山田悠喜子から、被控訴人松居敬二名義で」と改める。
6 同一五枚目一行目から同六行目までを削除する。
二 よって、控訴人らの本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。